『足の強いむくみ』
足のむくみで悩んでおられる方は多いと思います。
夜になるとむくんでくるという程度ですと、たいていはリンパの流れが悪くてむくみが出ていることや、いわゆる水太り体質、という方が多いと思います。
その程度ですと取り立てて心配する必要はなく、まずは生活習慣の指導や漢方薬を使って様子を見ることが多いです。
しかし、むくみがひどい方の場合、色んな疾患を考えて検査を行って原因を突き止めて治療にあたります。
先日、両足がむくんであまり歩けなくなった、という訴えで70歳台の男性がお越しになりました。
診察では両足の甲がパンパンに腫れていて熱感と痛みもありました。水虫がありヘビースモーカーでしたので、印象として心不全や腎不全からのむくみというよりは感染症か動脈の詰まりかな、という感じでした。蜂窩織炎という感染症か、あるいは閉塞制動脈硬化症(ASO。最近は末梢性動脈疾患:PADと言われています)の可能性も考えてすぐ近隣の総合病院の循環器内科に紹介しました。
すると循環器内科では幸いなことに、血管には異常がありませんでした、と返事が返ってきました。
そこで、ちょっと後手に回ってしまったのですが、一般的な採血を行いました。
すると、炎症反応や血栓、膠原病のマーカーは全く上がっていないのですが、カリウムが2.3と低下、アルブミンという蛋白が3.1に低下していました。また、赤血球が大きくなるタイプの貧血と、肝機能異常を認めました。腎機能は正常でした。(後日、念のための追加検査でKのバランスに関係するレニン、アルドステロンというホルモンは正常でした。)
基本的な採血の結果と生活習慣の問診から、むくみが起こるに至ったストーリーがはっきりとわかりました。
1日に缶ビールを6本飲み、まともな食事は1食。野菜はカフェのモーニングで少しだけ。
野菜・果物の摂取不足とビールの利尿作用により低カリウム血症となっており、きちんとした食事が少なくて低栄養状態のため低タンパク血症になり、これらからむくみが出ていたのです。
赤血球が大きくなるタイプの貧血も、ビタミンB群や葉酸などの栄養の摂取不足と喫煙による吸収障害を裏付けていました。
この方には治療としてカリウムを薬で補いつつ、飲酒量を減らすこと、1日2食しっかり食べること、野菜とくだものの摂取を積極的に行うことなどを繰り返し指導しました。
その結果、約2週間でカリウムは4.5と正常値になり、アルブミンも3.3まで少し上がり、むくみは大幅に改善しました。
これからは薬はなくして生活指導だけで様子を見ていけそうです。
むくみ、と一言で言っても、症状が強い場合はこのように色んな原因を考える必要があります。
ちょっとめずらしく?、純粋な内科のお話でした^^