アレルギーの話 『アレルギー体質の改善に有効な漢方薬』

2014-06-16

 開業して以来、治療の幅を広げて少しでも患者さんがよくなるようにと色々と情報収集をしています。
 

 6月は2つの幼稚園の健康診断で200名以上の幼稚園のお子さんを診させて頂きました。

 その中に、食物アレルギーがひどくて、「エピペン」という、アナフィラキシーショックを起こしたときの対処用の注射剤を幼稚園に持ってきているお子さんがいました。

 いま見つけたのが、こんなケースレポートです。

食物依存性運動誘発性アナフィラキシーで、緊急入院を繰り返し、体質改善を求めて漢方外来を受診した28歳の女性。小麦、りんご、アスピリン等で発作を生 じ ていた。T社小青竜湯6gから開始し、問題が無かったので、9gに増量維持。漢方治療後、8年間アナフィラキシーなしで経過中。  

         ( 聖マリアンナ医科大学 総合診療内科/漢方外来 崎山 武志 先生 のご報告 )

 凄い効果ですね。

 小青竜湯は花粉症に効果があることで有名な漢方ですが、このメカニズムはかなり解明されています。

 即時型と遅延型の両方のアレルギー反応に抑制作用を発揮するだけではなく、アレルギー体質をも改善するのです。

 具体的に花粉症を例にとると、肥満細胞からヒスタミンなどのケミカルメディエーターが出るのを抑えることで、くしゃみ鼻水、鼻づまりなどのアレルギー反応の症状が抑えられます。これは即時型アレルギーを抑える作用です。

 また、好酸球が鼻の粘膜に入って化学物質を出すことで血管が薄くなり、粘膜が腫れて鼻づまりが起きることを防ぎます。これは遅延型アレルギーを抑える作用です。

小青竜湯の花粉症に対する作用機序 

 さらに、小青竜湯は液性免疫を担うTh2細胞が過剰に優位の状態を是正することで、IgEという免疫物質を減らし、即時型アレルギー全体を減らすのです。これは、アレルギー体質を改善する、と言い換えることができると思います。

 最初に引用したケースレポートに戻りますが、アナフィラキシーも即時型アレルギーですので、小青竜湯がアナフィラキシーを繰り返すような患者さんの体質改善にも効果的なのです。

 Th2優位のアンバランスな状態が改善すると、細胞性免疫を担うTh1系統がうまく働くようになり、ウィルスに強くなるというおまけもついてきます。

 ところで、小青竜湯の「青竜」とは麻黄のことであり、麻黄(:Ephedra
Herb)の主成分はエフェドリンです。エフェドリンには交感神経興奮作用があり、発汗、鎮痛、気管支拡張などを促すため、風邪や関節痛、気管支喘息などに有効です。

 この麻黄がアレルギーを抑える主成分だとは思いますが、漢方は複数の生薬の組み合わせで特異な作用を発揮しますので、小青竜湯も麻黄単独では発揮し得ない抗アレルギー作用を発揮しているのでしょうね。

 小青竜湯は胃腸がとても弱い方や狭心症などの心疾患がある方、妊婦さんでは使えませんが、それ以外の方であればアレルギー体質の改善にお役立てできると思います。

 冒頭の話に出した、「エピペン」を幼稚園に持参しているお子さんにも、ひょっとしたら効果があるかもしれませんね。

※写真引用元:池田勝久 臨床の幅をひろげるKAMPO FIRST STEP(8),日医ニュース,1015,12,(2003)

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