予防と養生力アップに力を入れていく。
今日は診察の一コマとたまたま見たテレビがリンクして、表題に書いたことに本腰を入れるときが来たことを知らせてくれました。
診察の一コマというのは、お子さんの風邪が治りかけていたのにまた咳と熱が出てきた、と訴えて小さいお子さんを連れてお母さんが来院されたことです。
これまでもお子さんの風邪でよく来院されていて、一週間前にも風邪症状で来院されていました。それまでにも一度は気管支炎で総合病院に紹介して入院になったことがあり、それ以外にも少し熱性痙攣があったとのことで、お子さんの病気にはかなりナーバスになっておられる状態でした。
一人目のお子さん、ということも不安を増大させる一因だと思います。それに、核家族なのか、詳しくは聞いていませんが、周囲に相談できる家族も少ない印象でした。
これまでは気管支拡張薬、抗アレルギー薬や去痰剤などを混ぜたシロップを処方したり、場合によっては抗生剤も処方していました。お母さんの不安に応えようとすることや、「危ない疾患から考える。」という救急での癖からついつい、薬中心の診察になってしまっていました。
しかし、今回は一週間前に風邪で来院されており、風邪が治ってきた過程での咳と発熱とはいえ、活気は非常に良好で印象としては経過観察で問題ない様子でした。
さすがに、このままでは病院に頼るだけでこの子はたくましくは育たないし、お母さんの自信も芽生えない、と思ったのです。
そこで、今日は色々とお話をしました。
風邪にかかることを繰り返しているうちにじょじょに免疫力がついてくること、ぐったりしたり呼吸がおかしくなったりといった異常があればすぐ病院に来るべきだが、風邪では家で養生するだけでもよいこと、お母さん自身の感性を信じて子どもが頑張れるかどうかをある程度見極められるようになってほしいことなど。
資料もいくつかコピーして、根菜類の味噌汁で身体を胃腸から温めて免疫力を高めるとよいこと、大根とりんごのすりおろし汁はお子さんでも比較的飲みやすくて熱が高いときに下げる効果もあることなどを説明しました。
熱性痙攣の再発を心配されていたので、高熱時の解熱剤を処方し、いざ痙攣が起きたら手持ちの座薬を使うことを説明しました。甘麦大棗湯という漢方が熱性痙攣に効果があるのですが、今回は診療中に頭に浮かばず処方しませんでした。
一人目のお子さんで不安がいっぱいでしょうが、お母さんもじょじょに成長していかないと、と思うのです。
それに、お子さんの病気をいたずらに怖がることはしないで、外でよく遊ばせて抵抗力と体力をつけていく必要があります。
こういう予防や養生のことは、大人の方に対してもできるだけ診察でもお伝えしているようにしています。
糖尿病の方への食事と運動の指導はもちろん行っています。食事については患者さんの強いご希望で糖質制限をしたケースもあります。
2ヶ月程度で特に副作用はなくA1cが7%台から5%台にすっかり寛解しましたね。途中、飢餓状態になれば現れる尿ケトン体という検査はずっと陰性でした。 この方は脂肪合成の力が高かったと同時に、脂肪燃焼能力も高かったのだと思います。
食事については他にも、例えば早食いの方には箸を置いてしっかり噛むことを指導したり、麺丼定食をよく食べる方には炭水化物の合わせ技はやめるよう指導したりします。
また、乳製品の過剰摂取で腸内環境が荒れている方やには乳製品を控えるように指導しますし、白砂糖の過剰摂取で同じく腸内環境が荒れたりビタミンとミネラルの欠乏状態に陥っている方にはそれを指摘して白砂糖の摂取を減らすよう指導します。
運動についてはウォーキングを勧めることはもちろんですが、朴忠博先生の漢方体操や津田啓史先生の進化体操を参考にして、腎を強め水毒を改善する体操を実技指導したり、自律神経を整えつつ背骨から体の幹をほぐす体操を指導したりしています。
心の指導については、自らの体を動物ケアして愛情を充電することをお勧めしたり、固定した視点を切り替える観点を提供したりもしますし、漠然とした不安に意識が固定している方には呼吸に意識を置くことを勧めたり(数息観やマインドフルネス瞑想)、意欲低下に対しては脾を強める運動を指導したりと、体からアプローチする指導も行っています。
不眠の方には漢方の補助療法や睡眠リズムを調える薬の処方も一部では行いつつ、朝日を15分以上浴びること、日中にしっかり体を動かすこと、夜のブルーライトを避けることなど、自律神経を調えることなどを各人の生活に沿いながら指導しています。
でも、こういうことを伝えていても、本当に治りたいと思っていない方は、延々と病気を再生し続ける無限ループを周り続けておられます。
何度診察しても変わることはありません。
開業して早7ヶ月が過ぎ、そろそろこういう一向に進んで行かない無限ループからは卒業したい気持ちが一層強くなっています。
そんな折、たまたま見たNHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』で、虫歯の予防に人生をかけている歯科医と、それを見習って一念発起して開業した歯科医の先生がクローズアップされていました。
患者さんから反発されながらも患者さんの人生全体を考えて、虫歯の予防に一生を賭けている熊谷先生。
熊谷先生の教えを実践しようとしつつ、高い自費の検査費用や手間のかかる予防指導のハードルが高くて、診療スタイルに迷いを持っておられる新規開業の先生。
結局新規開業の先生は、熊谷先生と再会して、予防に力を入れることを再度決意し、迷いを抜けたようでした。
この開業医の先生の姿を見て、自分の診療の信念は何かを再度自分に問うて見ました。
自分の診療の信念、それを言葉にしてみると
患者さんが笑顔で幸せでいること。
そのために、クリニックのそばにある楠の大木のように頼れる存在であり続けるし、
太陽のように温かい存在であり続ける。
そして、病気の根元にアプローチして、いのちの根っ子から元気な人を増やし
自分も患者も病気や問題に学んで共に成長し、ますまず輝く人生を歩んでいく。
できれば医学を超え、大地とのつながりの回復、意識の自由さの獲得、感性と養生力の高まり、
与え合う関係の構築、そういった意識の進化のフィールドを提供していきたい。
そういうことなのです。
まだまだ理想を実践するには時間がかかりそうですが、一歩ずつ歩ませてもらっています。